アーティストの言葉
「ブドウ破砕人」
初めに、太陽が地平線近くにある頃、1人の人間が薄明かりから現れ、自分の腕先に道具があるのを見つけました。手と呼ばれるものですが、彼は何の役に立つのかと自問しました。
この風景をさまよっているうちに、彼は小さなブドウ樹からブドウを一粒摘もうと自分の手が伸びているのに気が付きました。親指と人差し指にあるブドウを潰してみると、前腕に汁が流れました。これをなめてみると、美味しかったのです。「そうか、そうだったのか。」「この手は結構役に立つな」と彼は思いました。
彼は、喜びながら、もう1つのブドウを搾り、さらに別のブドウを搾りました。時間と実践を重ねて、彼は、優れたブドウ搾り人として称賛されるエキスパートになりました。とはいえ、数十年もの間この作業を続けるうちに、彼の手は荒れてひび割れ、指は感覚を感じなくなっていました。彼は、自分の手が見知らぬものへ伸びた時に感じた最初の体験をもう一度味わいたいと願いました。
ブドウ破砕人は、自分の手が死にかかっていると思いました。彼は、座って木樽から最後のブドウを取り出し、指の間に挟んでみました。つやと瑞々しさのある美味しいブドウでした。ブドウは、まだ生きていたのです。「長いことお前を見ていなかったな。本当にすまない。お前のことを忘れていたよ。」さらに近づけて見てみると、これまで見たことのないものが見えました。「いま思ってみると、もしかしたら……?」
ボブ·バッド